Ariana Grandeのthank u, next。【アルバムレビュー/アリアナ・グランデ】

  • アルバム名: thank u, next(サンキュー、ネクスト)
  • アーティスト名:Ariana Grande(アリアナ・グランデ)
  • リリース:2019年2月8日
  • 評価:5.5/6

Ariana Grandeとは?

アリアナ・グランデはあまりにも有名なアメリカの女性シンガーです。僕がアリアナ・グランデを知ったのはドラマ「ビクトリアス」ですが、このドラマのあからさまにファニーなキャット・バレンタインの役でアリアナは人気を博しました。それから本格的に歌手として活動し始め、同ドラマで主演だったヴィクトリア・ジャスティスよりもあっという間に人気となったのは鮮烈でした。そして今となっては、別の「ヴィクトリア」をチームの一人として、この素晴らしいアルバムを作り上げたのも非常に面白い事実ですね。

これまでに2013年の”Yours Truly”、2014年の”My Everything”、2016年の”Dangerous Woman”、そして2018年の”Sweetener”と4枚のアルバムを発表しています。Sweetenerのアルバムレビューはこちらから。また、2019年コーチェラ3日目のヘッドライナーに抜擢されましたが、これによって彼女は最年少ヘッドライナーとなりました。

(前作SweetenerよりR.E.M.のライブパフォーマンス)

そんなアリアナ・グランデは、日本好きとしても知られていますが、その日本好きが仇となり最近「七輪問題」が起きてしまったようです。

そんなアリアナはデンジャラス・ウーマン・ツアー中におけるマンチェスターアリーナ爆発物事件によってPTSDを患っているとも言われています。その悲しみ・辛さを乗り越えて作られたのが2018年の”Sweetener“でしたが、同年秋には元交際相手であるマック・ミラーの死という悲しい事件もありました。明るくない出来事も色々とアリアナの周りで起きてきたのですが、アリアナ・グランデの素晴らしさはアーティストとして、それらを音楽という形に昇華し、その音楽で人々をそれまで以上に感動させられることだとも思うのです。

thank u, nextはどんなアルバム?

2019年2月8日にリリースされた今作は、バレンタイン・ギフトとも言える作品かもしれません。七輪問題があり、大好きな日本語の勉強もやめると公言してしまったアリアナですが、とにかく”thank u, next”がしっかりリリースされてよかったです。そんな”thank u, next”はあくまでノーフィーチャリングとなっており、この意味においても、これまで名だたるラッパーともコラボしてきたアリアナにとっての新境地なのです。

アリアナグランデの前作は2018年8月にリリースされたSweetenerであり、今作は1年も経たないうちにリリースされた作品だけに、ぜひSweetenerと比較しながら楽しみたいものです。しかし、Sweetenerとは似ても似つかないというのが、今作”thank u, next”の大きな特徴の一つにもなっています。

thank u, nextのプロダクションは?

前作Sweetenerはファレル・ウィリアムスとタッグを組んだことで、ファレル節の中でアリアナが新たな境地に辿り着き批評家からも絶賛された作品となりました。一方のthank u, nextは敏腕ポップ・プロデューサーの一人であり、ブリトニー・スピアーズの”…Baby One More Time”やバック・ストリート・ボーイズの”I Want It That Way”なども手がけたマックス・マーティン(Max Martin)が深く関わっています。マックス・マーティンといえばテイラー・スウィフトのプロダクションでも知られていますが、アリアナ・グランデはそんなマックス・マーティンのプロダクションを無駄遣いすることはなかったと言えます。

また、これまでもアリアナのヒットソングに絡んでいたマックス同様スウェーデン出身のソングライター/プロデューサーのIlya Salmanzadehもやはり多くの楽曲でライティング・プロデュースともに関わっています。

そしてアリアナ・グランデのインスタグラムをみていても無視できない存在なのが明らかだったのが、Tommy Brown(トミー・ブラウン)です。トミー・ブラウンは今アルバムの重要シングル曲”7 rings””thank u, next”にヴィクトリア・モネ(Victoria Monét)とともに関わっています。

つまり、スーパープロデューサーのマックス・マーティンはもちろんなのですが、やはりこのアルバムはトミー・ブラウンとヴィクトリア・モネがいなかったら完成し得なかったと言えるでしょう。ヴィクトリア・モネに関しては、”7 rings”に登場するアリアナが指輪を買い与えた「6人のビッチ」の一人ともなっています。

thank u, nextの12曲を徹底解説!

1. imagine

2018年12月にすでにシングルとしてリリースされていた曲ですね。開放的な調子のこの曲は一曲目となりましたが、この曲がこのアルバムのトーンを決めることにはなりませんでした。アルバムは聴き進むにつれて複雑性を帯びていきます。改めてこの一曲目を聴くと、そんなことすらも「想像」しておけ、と釘を刺されていた気にもなってしまいます。

ちなみにこのJimmy Fallonのショーでのパフォーマンスはクソ素晴らしかったです。そんなImagineという曲の歌詞には、デリバリーのパッタイを注文する場面が含まれます。アリアナはパッタイが好き何でしょうか?!最高ですね。他にもカップルで家でチルアウトする様子が描かれており、マック・ミラー(Mac Miller)のCinderellaという曲との類似性も見出せます。

2. needy

2曲目のneedy。柔らかい曲ですね。まだ後半の不穏さをそこまで湛えてはいませんが、繰り返される和音は完璧に綺麗ではないですよね。淡い不穏さ・不安感はすでに表出している感じです。

そして柔らかいからこそ徐々にクセになっていき、気づいたらヘビーローテーションになっているような曲でもあります。不安定ながらも美しいコーラスと同じく脆弱さを湛えつつも美しい後半のオーケストレーションも素晴らしいです。そして、そんな柔らかくも脆く美しい”needy”から、女性としての力強さが表出している”NASA”に移行するのもよいです。

“needy”は「精神的に脆く助けを必要としている」状態と「貧しい」状態を指す言葉ですが、”I can be needy”というのが「精神的に脆弱になることもある」ことだけでなく「そこから救われるなら富を失ってもいい」という意味さえ含んでいたら面白いかもしれません。これは考えすぎかもしれませんが、兎にも角にもこのアルバムは二重・三重の意味をもった歌詞がかなり多く含まれていて、繰り返し聴いて楽しむのに適しています。

3. NASA

唯一大文字だけとなっている曲。この曲のイントロは、月面着陸を果たしたニール・アームストロングの名言の一部を差し替え、

This is one small step for woman
One giant leap for woman-kind

と女性のエンパワーメントやフェミニズムを感じさせる文面となっています。

 (NASAの公式動画を差し挟んでんでみました。)

タイトルがNASAになっているのも、”space” administrationであることから、男性との”space”が必要なことについて歌っています。これまではそのスペースが必要だと感じた男性を中心に彼女の人生は回っていたけれど、今となっては

It’s like I’m the universe and you’ll be N-A-S-A

自分が宇宙で男性はNASAだと、力関係が逆転したことを示しています。またこれは離れている時間も重要だということも示しており、NASAの宇宙船は宇宙を探査するもののまだまだその解明は進んでおらず、そのことを、離れているからこそミステリアスな存在でい続けられるという恋愛関係になぞらえています。

4. bloodline

ヘビーなベースに、決定的なホーンのセクションが加わったマックス・マーティンのプロダクション。

Don’t want you in my bloodline, yuh
Just wanna have a good time, yuh

というラインはピート・デヴィッドソンへの当てつけでしょうか。「あなたを私の血筋に入れたくはない。ただ楽しみたいだけ」というなんともボールドな歌詞。

そして実に興味深い点としては

Because I’m trying to do the best I can
And they can’t find something to satisfy me, ugh

 (ベストを尽くしたけれど満足いくものを見つけられなかった)

という部分の元ネタは、アリアナの祖母の「補聴器」に関することらしいということです(Zach Sang Showでアリアナが言っていました)。しかしそこにインスパイアされ「恋愛関係」にまで敷衍したアリアナの創造性は本当に素晴らしいです。

5. fake smile

この曲も柔らかい印象です。しかし、イントロでWendy Reneの”After Laughter(Comes Tears)という曲をサンプリングしているのがまず興味深いです。同曲はウータンクランやメトロブーミンなど、ヒップホップアーティストにサンプリングされることも多く、この点においてもアリアナ・グランデのヒップホップへの接近が観察できます。

そして曲調の柔らかさと対を成すように、この曲でアリアナは自身のメンタルヘルスについて歌っています。”Fuck a fake smile”という歌詞に全てが集約されている気もしますが、「カメラの前では笑顔で居ろよそれでバカ儲けしてるんだから」という反論がありそうなものの、笑顔を取り繕えないというのはセレブか一般人か問わずの真理かもしれません。

アリアナ・グランデは確かに色々な”shit”に直面してきたと言えます。マンチェスターの爆破事件、ピート・デヴィットソンとの破局とその後の悶着、元カレマック・ミラーの死、ソルジャー・ボーイを含めたラッパーからの”7 rings”に関する指摘、カニエ・ウェストとの言い争い、日本語タトゥーなどへのバッシング。さまざまな問題がある上での答えが、この曲だとも言えそうです。とりあえずタトゥーは「七輪」の時点では全くダサくなかったというのが僕の意見です。

6. bad idea

ギターのリフが頭から離れなくなりますね。なんとなく不穏でダークな雰囲気に満ちており、自己責任について歌っています。決してディスではないとしても、どうしても”I’m the one who wrote it”などの歌詞があると、ドレイクの顔を思い浮かべてしまうのは、僕だけでなく世界中のヒップホップファンに当てはまることでしょう。そんなドレイクもグラミー賞をとりましたが。

ヴォーカルが途絶えた後でも、インストが不穏さを煽り立てるように鳴り続けます。ストリングスがドラマチックさを加えた上で、不吉なコーラスが生まれ、そして電子ビートはそれでもかというほどに続く。失恋などで生まれた痛みを和らげるために浮かんだ「悪い考え」を象徴するようなインスト部分は決して冗長ではなく、この曲のハイライトとさえ言えそうです。

7. make  up

“I might break up with you just to make up with you”(仲直りしたいがために別れるかも)というのは、女性の賢しさを示していて鳥肌が立ちました。相手が取り乱して自分の名前を叫ぶと興奮するから、ふざけて別れるフリをするなんて・・。もし自分がそんな状況に陥ったら気が狂いそうになりますよ。女性は「男ってバカね」と言いますが、こっちからしたら「女は本当に分からない」ですからね。

8. ghostin

アリアナのヴォーカルの素晴らしさが如実に表現されている曲です。スケートリンクで聴きたくなるような、昇天感があります。ストリングスもよい効果を与えていると思います。Jポップの重大な問題点のひとつはストリングにあると個人的には思っていますが、ポップにおけるストリングスのよい例がこの”ghostin”という曲で示されているでしょう。

この曲には

Look at the cards that we’ve been dealt

「配られたカードをみてみて」というラインがあります。人生をポーカーなどのカードゲームになぞらえた表現ですが、これはSweetenerのタイトルトラック”sweetener”にもありましたね。

さらに有名なバーブラ・ストライサンド主演のミュージカル”Funny Girl”にも言及している

Heavy tears, a rain parade from hell

という歌詞もありますが、これはsweetenerの”no tears left to cry”とは対を成す印象があります。

このように前作”Sweetener”からたった半年の期間を経てのニューアルバム”thank u, next”はやはり”Sweetener”の影響も案外多く、比較も楽しそうです。そしてこの曲はマック・ミラーに言及しており、マック・ミラーが亡くなった後のピート・デヴィットソンに対して、アリアナが、

I know that it breaks your heart
when I cry again Over him,
mmh I know that it breaks your heart
when I cry again ‘Stead of ghostin’ him

(また彼のことで泣いてあなたを傷つけたってわかってる)

と言っていると考えているファンは多いはずです。”ghost”とは「連絡をきっぱりと断ち関係性を終わらせる」という動詞でもあり、ここではアリアナがマック・ミラーのことを振り切ることを意味しつつ、死んでしまったマック・ミラーの「ゴースト・幽霊」ということも匂わせていると個人的には思います。ゴーストなので連絡もクソもないためそもそもゴーストできないんですが、マック・ミラーのことを忘れられなかったのかもしれません。

また、ファンは”ghostin”がマック・ミラーの”2009″という曲をサンプリングしているとして、歌詞以外にも注目して盛り上がっているようです。

9. in my head

“Pop” Wanselによるデリケートなプロダクション。アリアナの高音を楽しみたいなら、この曲でしょう。そして、”skrrt skrrt”(シュクーシュクー)というヒップホップ効果音(車の急ブレーキ音)もうまく活用されています。アリアナの超高音とこの”skrrt skrrt”の対比が、なんとも言えない感じになっています。

10. 7 rings

サウンドオブミュージックの”My Favorite Things”を大胆にサンプリングしたことで話題となった “7 Rings”。1月18日にリリースされた上で2週間後に2 Chainzのリミックスもリリースされ、そちらも要チェックとなっていた曲です。 “thank u, next”のPVに登場したナンバープレートに”7 Rings”と書かれていました。

内容的には「友達とパーティーをしてシャンパンを飲みまくりティファニーに行ってふざけて友達全員に指輪を買った」というアリアナの実体験が元になっており、「リーテイル・セラピー」(買い物によるストレス発散)の曲だとも言えます。また、女性にとっては「友人ソング」という認識も強いかもしれません。この曲には「6人のビッチ」が登場しますが、これにはアリアナと仲良しのシンガーソングライターVictoria Monét(ヴィクトリア・モネ)などが含まれています。

指輪を買える富をひけらかす点は、ヒップホップに通じていますが、サウンド的にもかなりヒップホップに接近したポップソング/R&Bソングとなっています。”My Favorite Things”の有名なメロディに現代版リアルセレブの散財を歌うのは面白いですが、この曲にはビギー(The Notorious B.I.G.)の”Gimme the Loot”もブリッジとして登場します。

ヒップホップといえば、この曲によって数人のラッパーがアリアナのことを「パクリだ」と非難しました。その中にはPrincess NokiaやSoulja Boyだけでなく2 Chainzも含まれていましたが、結果として2 Chainzはリミックスに登場することになりましたね。まあ確かに類似するフロウではありますが、許容範囲のパクりというか「盗作=plagiarism」ではないと個人的には感じます。

(Soulja Boyは自身のこの曲がパクられたと主張)

この曲がビルボード一位を獲得したことで、アリアナはマライア・キャリーおよびブリトニー・スピアーズに並び、複数曲のナンバー1デビュー記録をもつ3人目の女性アーティストとなりました。

11. thank u, next

アルバムタイトルになっているこちらの曲。2018年11月にすでにリリースされていたこちらの曲は、アリアナの過去の恋愛について具体的に触れています。パーソナルなだけにアルバムでどのような位置付けになるかと思っていたのですが、タイトルになった上にペナルティメート(最後から二番目)とは。浮くどころかアルバムのテーマ的とも言える存在のこの曲は、欧米諸国で一位を獲得しました。

ブレイク・アップはアーティストの中でも特に歌手にとっては、歌詞にその体験を込めやすいと思いますが、その落とし込みかたは人それぞれです。その中でビッグネームであるアリアナが「感謝」というスタイルをとったことは、世界的な恋愛観の大きな変化とも言えるかもしれません。ビッグ・ショーン (Big Sean)、リッキー・アルバレス(Ricky Alvarez)、ピート・デヴィッドソン(Pete Davidson)、マック・ミラー(Mac Miller)という4名の元カレの名前を具体的に出して回想、感謝の気持ちを歌っています。

(この曲でマックとアリアナは接吻を。懐かしい・・ )

プロダクション的にはシンセ・ポップの要素を含み、軽やかなアリアナの歌声とマッチしています。BPMは遅めですが、ハイハットも印象的で飽きない曲となっています。

Vultureは2018年のベストソング10でこの曲を一位に挙げています。Pitchforkを含めた他のメディアも高く評価していますが、7 Ringsの後のthank u, nextとという配置はどうでしょうか?サウンド的には正しい気もしますが、物語を展開するなら恋人と別れた後に友人の大切さに気づくのが正順でしょう。しかし「友人に指輪を与えた、その背景に実は恋人との別れがあって、でも前を向いている」という解釈もできますから、むしろこの曲順は奏功しているかもです。曲調的には”thank u, next”の方が後にふさわしい気もしますし。そしてこの曲のイントロ、なんとなくジブリ感がありますね。

12. break up with your girlfriend, i’m bored

最後の曲はタイトルからしてセンセーショナルであり、かなり挑戦的なビートに驚きました。実に綺麗なコーラスがあるのですが、それを物ともしないように不気味さの中を曲は突き進んでいきます。薄暗い水の中を行く先も分からずに泳がなくてはいけないような不気味さがあります。この曲には、TLCのヒットソング”No Scrubs”やDestiny’s Child、マライア・キャリーなどをプロデュースしてきたKevin Briggsのクレジットもあるのが興味深いです。

アルバムリリースに伴い、break up with your girlfriend, i’m boredのMVもリリースされました。リリースからたった2時間で45万回以上再生されていました、おそるべし・・。「退屈だから彼女と別れてよ」なんて言われたら、あなたはどうしますか?(男性諸君への問いかけ)..もちろん言ってきた人が彼女よりもホットだということを前提に。まず揺らぎますよね、そりゃ揺らぎますよね、何言ってるんだこいつ頭おかしいと思いつつも、惹かれますよね。

しかし、誰しもが実現不可能な空想として一度は思い浮かべる「悪い考え」を、こうして高らかに歌い上げてしまうあたりが、さすがポップスターアリアナ・グランデだと思うわけです。そして、そんな大胆さだけでもかなりポイントは高いのに、さらに感銘を受けたのが、アリアナが「彼女の方と」キスをしそうになるところでMVが終わるということです。

完全に彼氏の方を奪うために彼氏に対して「彼女と別れて」と言っていたと思っていたのに、どんでん返しで欲しかったのは彼女の方だった可能性が示されてしまいました。そしてそうだとしても「退屈だから彼女と別れて」という彼氏に言っていたのはなんら矛盾しないんですよね。

さらには「彼女」がそもそも自分自身で、自分と別れて言っていた可能性も示唆されています。つまり、自分の彼氏に対して退屈だと言っていたと。MVでもアリアナと彼女が鏡合わせになるシーンがあって、この可能性も大いにありえそうです。どれが正解かはわからないとしても、とにかく大胆で素晴らしいタイトルの歌です。

ちなみに、このMVは”Queerbaiting“(クウィアベイティング : 映画・テレビなどのフィクションで同性愛を匂わすだけで明確には描写しないこと。それによってLGBTの人たちの興味をひくも、可能性を示すだけで満足度を与えず、傷つけることもあるという)だとして批判も受けています。暇人は多いものです。

Thank U, Nextの歌詞とは?

このアルバムで気になった歌詞を記しておきます。

1曲目の”imagine”に関してはやはり、

Staying up all night, order me pad thai

が印象的です。カップルが家でゆったり過ごす際には、パッタイは欠かせないですよね。僕もパッタイ家デートしてみたいです。

2曲目の”needy”に関しては、needy(精神的に助けを必要としているor貧しい)こととneeded(必要とされている)ことがテーマの中で、

I admit that I’m a lil’ messed up

But I can hide it when I’m all dressed up

という歌詞があるのが印象的です。トラウマチックなことも含めて色々なことを経験してneedy(精神的に脆弱)であることを認めつつも「まあちょっとヤバかったのは認めるけど、着飾れば隠せるし」と言えるのもまたアリアナらしいかもしれません。

3曲目のNASAは、コーライターであるヴィクトリア・モネの功績も大きかったみたいですが、やはり

It’s like I’m the universe and you’ll be N-A-S-A

の部分はエピックですね。時代に言葉を刻んだ感じです。ちなみに2016年以降は若者ファッション文化においてNASAのデザインがちょっとしたトレンドになっており、アリアナもそんなNASAのデザインのオーバーサイズシャツを着てピート・デヴィットソンとデートしていたことがありました。このことから、なんとなく、2015年以降という時代を反映したカルチャーを感じさせる曲でもあります。

4曲目の”bloodline”では

I ain’t lookin’ for my one true love Yeah,
that ship sailed away

という歌詞があります。これはrelation”ship”を船に例えたものだと考えられます。さまざまな色恋が取り上げられてきたアリアナですが、もはや現時点で本気の恋愛をするつもりはないという意思表示かもしれません。

5曲目の”fake smileは

Fuck a fake smile

がシンプルながらもやはり印象的ですね。アリアナはしっかりスウェア(汚い言葉を使用)してくれるので、ヒップホップ好きとしてもむしろ聴きやすいんですよね。thank u, nextのアルバムカバーにも「ペアレンタルアドバイザリー 明示的なコンテンツ」と日本語で記されており、むしろこれを記したいがためにスウェアしたのかもと疑ってしまったほどです。笑

9曲目の”in my head”における

When you broke my heart, I said you only wanted half of me

という部分は、破局とともに感じる女性の普遍的な感情と言えるのではないでしょうか?”half of me”というのは肉体的な部分であり、付き合っていた男はただアリアナというホットな女性との肉体的関係の部分のみを欲していたならば、このような言葉が出るのも実に自然なことだと言えます。

10曲目の”7 rings”は2チェーンズをフィーチャーしたリミックスも聴いておきたいところです。

2 Chainzを含めたラッパーのフロウをアリアナがパクったと言われていましたが、実際に2 Chainzとのリミックスを発表したことで、ソルジャー・ボーイやPrincess Nokiaは面食らったかもしれません。兎にも角にも、

I want it, I got it, I want it, I got it

という部分は耳にこびりついてもはや耳糞と化しました。

12曲目の”break up with your girlfriend, i’m bored”は「退屈だから彼女と別れてよ」というタイトルが強気すぎてヤバいですね。

他にも色々と掘り下げたい歌詞はありましたが、今作はとにかくSweetenerの完全な対になるとは言えないまでも、さらに新たなフェイズにアリアナが突入した混沌さを帯びていると感じました。

thank u, nextの総評は?

Sweetenerで第61回グラミー賞にノミネートされているアリアナですが、今回レビューしたthank u, nextというアルバムには、こちらから「Ari, thank u for showing your next stage」と感謝したくなりました。前作から時間がそう経っていないにも関わらず、かなり完成度の高いアルバムでした。かなりの脆弱さを湛えてダークなんですが、それでいてしっかりと美しく昇華されてもいます。

そして前作”Sweetener”とどうしても比較してしまいますが、ある意味でファレル・ウィリアムスありきの前作とは比べようにも比べきれない上に、どちらも素晴らしい作品だったと言えます。しかし、”Sweetener”をリリースした上でのアリアナの新たなフェイズがこの”thank u, next”ということで、僕はこのアルバムこそがアリアナ・グランデのこれまでのベストだと言い切りたいです。

また、これまでFutureやChildish Gambino、Big Sean、Mac MillerにNicki Minajなど名だたるラッパーをフィーチャーしてきたアリアナですが、今回はあくまでノーゲストでこれまでで一番ヒップホップに接近したポップアルバムに仕上がっていると思います。それでいてアンビエントなどの要素もある、つまり音楽愛好家ならば聴いておかないとまずい、2019年に早速出たAOTY候補です!兎にも角にも、リピ必至です!

 

追記:アリアナ・グランデは第61回グラミー賞最優秀ポップ・アルバム賞を”Sweetener”で受賞しました。テイラー・スウィフト、カミロ・カベラ、ショーン・メンデス、ピンク、ケリー・クラークソンを破っての受賞は、彼女にとって初のグラミー賞となりました。

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