marieインタビュー。【前編】

コーヒースタンドやカフェというのは、単にコーヒーを飲むだけの場所ではない。そうそうインスタ映えのスイーツにインスタ映えのドリンク、やっぱりインスタ映えだよね時代は。と、そういうことではない。コーヒースタンドやカフェというのは、ギャラリースペースとしても様々な可能性に満ちている。東京のコーヒースタンドやカフェを巡っていると、そもそもギャラリー感を前面に打ち出したお店もあったり、そうではないお店でもさまざまな展示が行われていたりする。そんなビッグな可能性の中で飛躍した一人のアーティスト、marie。自身もバリスタであり、シンプルながら独創的なアイディアに満ちた線画スタイルのイラストで、これまでコーヒースタンド・カフェを中心にさまざまな展示やイベントを行ってきた。今回は、そんなmarieがここまでどのように制作に取り組んできたのか、今何を考えているのか、そして今後どのような動きをみせていくのか。今東京のカフェ女子がインスタ映えスイーツ以上に注目しているmarieのストーリーを、シャープに切り取っていこう。

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marie。イラストレーター。桑沢デザイン研究所卒。藤沢在住。後ろ姿のイラストを制作。

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-こんにちは!

marie:こんにちは(     )

-何を笑っているんですか。ままいいや、ええっと今日はよろしくお願いします。

marie:(     )

-早速ですが色々とお聞きしていこうと思います。とりあえず、何か聞かれたいことはありますか?

marie:逆にね。何を聞かれたいか?職業とかですかね。

-…こほんこほん(咳払い)..ええと、職業は、何ですか?

marie:イラストレーターです。

-なるほど。イラストレーターになったきっかけみたいなものはあったんですか?

marie:今まさにこうして話しているローカル(THE LOCAL COFFEE STAND )で今年の3月に展示をさせてもらったことがきっかけです。もともとインスタグラムにイラストを投稿していて、もともと自分があんまり顔を出したくないということもあったし、線画がキャッチーになってたってこともあったし、みんなと違うのを描きたいと思って後ろ姿の絵を描き始めました。そうしたら、描いてほしいっていう人が案外多くて。

-なるほど。まさに時代の申し子というわけですね。

marie:それで何人か描いているうちに、ちゃんと仕事にしたらって言われるようになりました。というのも、無料で人の後ろ姿を描いてたら、そういうのを職業にしてお金を稼いでいる人たちに失礼だっていうことを指摘されて。それからまずイラストのアカウントを作って、それまで描いてたやつを投稿して。でもその時点では具体的にどう活動しようかっていうことも決めてなくて。フォロワーも30人程度でしたし。

-そこから、ローカルでの展示の話はどのように舞い込んだんですか?

marie:何かのきっかけでローカルの方がフォローしてくださって、ちょっとしてからDMをくださって。

-展示をしませんか、と。

marie:はい。晴れて第一回目の展示が実現しました。

人と人との繋がり

-なるほど。インスタがきっかけで展示が実現。まさに時代の申し子ですね。そこからはどのように活動してきたのですか?

marie:ローカルで展示をすると決まった頃に、ダブルオースタンドの方がうちでもやらないかって言ってくれて、2回目の展示も実現しました。そしてこの二つのお店っていうのはすごく人が集まりやすい・話題が広がりやすいお店で、色々な人と繋がれたりインスタで取り上げてもらったりすることも多かったです。それをみた他の人が展示やらないかって声をかけてくれたりだとか。人と人の繋がりで広がっていった感じですね。

-marieの活動は今後もっと広がっていくと思うのですが、近々の動きみたいなのはあるんですか?

marie:ありがたいことに、年明けの展示も決まっています。

-すごいですね。この勢いだと全国制覇、いや世界進出も夢ではなさそうですね。

marie:世界というと、台湾のとあるコーヒースタンドのイラストも担当させていただけることになってて。

-なんと!すでに世界進出していたんですね。おそるべし。

marie:担当させていただくコーヒースタンドは「秋朝コーヒー」というお店なんですけど。お店は100年以上前からある建造物で、日本とも繋がりのあるところなんですけど、歴史的建築物として人々が訪れることが多く、コーヒーを主体としてくるお客さんは少ないらしんです。そしてそんな現状を変えたいとオーナーさんが思ったらしく、ちょうどダブルオーの私の展示をみてくれて声をかけてくれました。オーナーさんがお母さんなんですけど、娘さんが語学留学で日本に来ていたんです。看板とか豆のパッケージデザインとかをやってほしいと依頼してくれました。

-marieって、こうやって展示をしたり本格的に活動したりする前のキャリアはどんな感じなんですか?

marie:高校を卒業してから、桑沢デザイン研究所で学んでいました。三年制なんですけど、とりあえず基本的なビジュアルデザイン・インテリアデザイン・ファッションデザインなどを一通り学んだ上で、三年の時に専攻を決めるという感じ。夜間もあって普通の大学にいきながら通っている子もいました。社会人しながらっていう人もいて、やる気のあるポテンシャルのある人が多かったです。ただ私は、やりたいことがわかんなくて絵も嫌いになった時期がありました。結局卒業するのが精一杯って感じで。

-時代の申し子の過去には、ポンコツの時期が。

marie:はい・・就職もデザイン系には進まずデザインとか絵とかとは全然関係なくアパレルの方に進みました。でもこうやってまた好きなことをやれる機会をもらえてよかったです。

(インスピレーション枯渇は)不思議とないんですよね。

-線画という部分に関してmarieは確立されたスタイルをもっているわけですが、今後それは変えないのですか?

marie:そうですね。線画ということだけでなく、後ろ姿ということに関しても。後ろ姿というのも今の私のコンセプトの一つなので、そこからブレたら私の作品として成立しなくなってしまう。

-marieに関して最も気になっていると言えるほどのことなんですけど、そのようなルールがある中で、これまでインスピレーションが枯渇したことはないですか?

marie:不思議とないんですよね。

-今後枯渇するという恐怖もないですか?

marie:よく「行き詰まるでしょ」とか「考えるの大変でしょ」とか言われるんですけど、やりたいことがありすぎて、本当にそんなことないというか。すぐ湧き出るじゃないですけど、発想が繋がりやすいんですよね。どっちかっていうと、自分のオリジナルよりも似顔絵とかの方が構図とかで悩むことは案外多いです。

-そもそもインスピレーションを得るプロセスはどうなっていますか?例えばどんなことから着想を得ているんですか?

marie:一番最初は、単純に後ろ姿でも似顔絵として似せられるというところに可能性を感じました。一人一人骨格は違うし、持っているものとかでその人の職業や生活を表現することもできます。そこから展示をするってなった時は、テーマを決めて描かなくてはいけなくて、コーヒースタンドだったらコーヒーに間することは入れたいなって。そういうときに自分がイラストレーターよりデザイナーよりだなって思うのが、直接的な要素よりも「実はこういう風に繋がっている」っていうトンチみたいのを効かせたくなるんです。

-一休さん。

marie:そういうのは自分でも自然に見てていいなって思えるので。例えば展示中のローカルのコーヒーカップのデザインは、おさげの女の子だったんですけど、実はその部分がコーヒー豆になっていました。そういうものに対して、意外とわかる人はすぐにわかってくれるし、わからなくても言ったらあーってなってくれる。有名人の後ろ姿を描いていたときにも「あれは誰々じゃない?」みたいなのに反応してくれるのも面白かったです。

-つまりそこには感心や笑顔があるわけですからね。素敵です。

marie:ダブルオースタンドで展示をやったときには、ダブルオースタンドの特徴のひとつである月替わりのメニューとして「イチゴデショコラ」っていうメニューがあったので、それを擬人化して頭にイチゴをのせ「イチゴデショコラちゃん」というのを作りました。そこから小さい女の子も絶対描こう、固定化しようって決めました。

-つまりコンセプトありきだと。

marie:コンセプトがあるからこそ、無から何かを生み出すのではなく、要素と要素を絡めていくということになります。そういう元にあるものをきっかけにして、夏だったら夏の要素、食べ物だったら食べ物の要素、みたいに発想を変えていくだけなんです。それから、もう一つコンセプトとして描いているのがあって。

-まだあるんですか!すごい自分を縛ってるように聞こえますが、だからこそ要素と要素を絡めていきやすい・・さて、そのコンセプトとは?

marie:お尻です。ていうのも、後ろ姿を描いて展示したときに、3枚1組の作品を描いたんです。それがお尻の部分だけを切り取ったもので、周りからの反応もかなりよくて。雰囲気が私自身も好きだったし、小さい女の子とお尻のお姉さんというコンセプトはそれぞれ全く異なるものだけれど、だからこそ絵柄なんかで統一性を出すと面白い。

-お尻おそるべしですね。

marie:後ろ姿って顔だけじゃなくて、全身でトータルなわけで。お尻もその一つで、お尻でも後ろ姿を表現することができる。こうやってお尻の絵も加えることで、私の絵を好きになってくれる人が多様化するっていうメリットもありました。

-お尻フェチの男性が好きになってくれたり・・

marie:そうそう!ってそれだけじゃないですけど(笑)あとは、可愛いんだけどセクシーでもあるみたいなある種のアンバランスさが打ち出されていますが、この点に関しても評判がよかったです。

marie:あと一つ核になっているのが、似顔絵です。似顔絵っていうのはやっぱり私がこうやって活動し始めたことの原点でもありますが、人と人が繋がれるという魅力があります。

-自分をルールで縛っているようでいて、その中で羽ばたいている。

marie:一つのことだけを発想しなくてはいけないなら行き詰まるかもしれないけれど、女の子・お尻・似顔絵っていう三つの核があるからこそ、それぞれテイストも微妙に異なるもので、枯渇しないのかもです。

-枯渇しないmarieの展示のポイントはどんなことですか?

marie_展示をするときには、配置・見る流れとかもちゃんと考えます。何枚も同じような雰囲気で描いているときには、数枚の絵全体で一つの作品だと考えてます。

否定から入らない

-マクロな視点というわけですね。さっき言っていたトンチだったり作品のテーマみたいな部分に関して、全く理解されない恐怖みたいなのはないですか?すぐに分かってくれる人もいれば、言ったら分かってくれる人もいる。でも皆がそうではないと思うんですが。

marie:昔だったらどうかわからないけれど、今だったらSNSも発達していて、そういうのを後で理解してくれる可能性だってあります。意図しないところでバズるみたいな。ダブルオースタンドで展示をしていたときには、ある絵を意図があって逆さまに展示していましたが逆さが可愛いみたいな風に捉えてくれた子が、他の絵に関しても逆さに飾ってくれたりして。最初見たとき、ん?って思ったけれど、それを否定するんではなくて、そこからむしろアイディアをもらうみたいな。今度はそういうことをしてみようかなって、繋げるんです。「逆さ展とかやってもいんじゃね」みたいな。

-文字通り”逆手にとって”。

marie:(無視して)絵を飾る場所とかに関しても、私の手元を離れた時点でそれは買ってくれた人のもので、飾り方に関しても自由です。床にポイッてするのさえも。それを否定するのではなく、この人にはこう見えてるんだなっていう。そしてもし自分がこういう風に飾って欲しいとか見て欲しいっていうのがあったとして、それが伝わらなかったら、単に自分の力不足だって考えます。見せ方が足らないっていう。

ただ、そういう否定しないっていうのはすごく面白くて、色々と視野が広がるし、いろんな人と繋がりやすくなる。否定から入ろうっては思わない。

-ポジティブ・アチチュード。

marie:私、人に対してもそうなんです。あんまり、この人嫌いだなとかこの人やだなとか思うんじゃなくて、面白いところを見つけるというスタンスなんです。

-否定から入らないというスタンスこそが、アートを切り開いていくのかもしれませんね。そしてそれは絵に対してだけでなく人に対しての考え方や人柄も反映される。そう考えると、自分がmarieの絵に魅了される理由が、すごくわかる気もしました。

(後編 へ続く)

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コメント

  1. より:

    わぁ…かっこいいです!!