逢瀬〜チョココロネと僕の限られた時間

恋をしたとして、その相手がたとえチョココロネだったとしても、どうか咎めないでほしい-そんな風に前もって皆に伝えられていたとして、どうせ笑い飛ばされていただろう。

チョココロネに始めて魅了されたのは、おそらく物心ついてから初めてパン屋を訪れたときだった。僕が知り得る限り日本の街角のパン屋は大抵チョココロネを販売していた。そしてチョココロネに魅せられた結果、パン屋のパン=チョココロネというイメージもかなり僕の中で定着している。 もしチョココロネが売っていなければそれはパン屋ではない・・僕はそんな風にさえ思っているのかもしれない。

僕の主食はバスマティライスだ。パンは米と麺に比べると好きとは言えない。僕にはカレーラバーというキャラクターがある。いいかい、僕の可愛いコロネちゃん。君との逢瀬はバスマティ婦人に決してバレてはいけないんだ。これは、不倫なのだ。不倫は文化だと誰かが言った。ならば僕らの愛も文化と呼ぼう。

と言いつつ僕に罪悪感があるわけではない。バレてはいけないけれど、それは君との時間を罪悪感に苛まれながらこっそり過ごすことを意味しない。あくまで慎重に行動するだけであり、むしろ君に緊張したり警戒したりしてほしくはない。慎重になりながらも、君との時間において僕は大胆でありたい。

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今日はピーコックというスーパーマーケットを訪れた。一般的なスーパーマーケットらしくパン屋が併設されており、スーパーに入る前に窓からパン屋の商品が目に入ってきた。こうしてスーパーに入る前にパンを見てしまったら、まんまとパンを買わなくてはなるまい。でも、そんな順路を辿ってしまってよかったと思った。

君がいたからだ。パン屋の棚に一瞥を送っただけで、もはや君しか目に入らなくなった。君は輝いている。相当に、輝いている。

衝動買いという言葉にはいささか悪いイメージが定着しているように思う。衝動買いした結果、後悔が付随することも確かに多いかもしれない。でもそんな一般的な見解が当てはまるほど君への愛はヤワじゃない。たとえコロネにチョコがぎっしり詰まっていなくても、僕からの愛は詰まりに詰まっている。排水口もビックリさ。

スーパーでの買い物を終えてパン屋へと足を急がせる。人参、しらたき、豆腐、豚肉・・今夜は鍋の予定でどの食材にも正直恨みはない。冬の鍋は最高だ。そんなの誰でも知っている。僕だってそう思っている。ただ、今この瞬間、袋の中の食材は文字通りの重荷でしかない。自分で買っておきながら「お前らを買って持ってやっているんだ俺様は」という意識が働いている。

パン屋に着くなり他のパンを無視して君に向かう。もう分かっている。最も艶やかな君。溢れ出したチョコからは自信がうかがえる。君の自己顕示欲が心地よい。自信に満ちた君が好きだ。僕は君のナルシシズムを愛する。

君を掲げてみる。さらに君の輝きは増すばかりだ。

自宅に帰るとすぐに手を洗い、君を袋から取り出す。そして君を掲げてみる。さらに君の輝きは増すばかりだ。君はどんな種類のトロフィーよりも輝いている。僕がこれまで成し遂げてきたどんなに素晴らしい功績よりも、君を愛せたことがダントツで素晴らしいことなんだ。

君を袖の中に。すると君は少しだけ照れる。

僕は君への愛をあらゆる方法で伝えたいと思う。君を袖の中に。すると君は少しだけ照れる。照れた君が見たかった。照れすぎてチョコクリームが溶けてしまっては困る。まだ早いよ。じっくり楽しみたい。

枕元の君は少しだけ緊張しているように思える。

昼下がりの時間は緩やかに流れていく。枕元の君は少しだけ緊張しているように思える。知っているさ。君が本当にリラックスできるのは僕の舌の上だけなんだって。ただ時折僕がどんな風に感じているかを君にも感じてほしいと思う。つまり僕が昼寝をして君の夢をみているとき、そのときの心地よさを君にも少しは感じ取って欲しかっただけ。さて、計測の時間だよ。

君の体重をはかることを君は僕からの辱めだと思うかもしれない。しかしこれは、僕が君のことを少しでも深く理解するということに他ならない。フォルムは相変わらず完璧だ。巻き具合、焼き艶どちらも申し分ない。問題は、重さだ。

君の体重が軽いと僕は不安になってしまう。

な、64.9g?僕は65g未満の君を君だと認めたくはない。君の体重が軽いと僕は不安になってしまう。なぜだ?自ら端っこの方を揺すり落としたのかい?649だけに「むしろ」いいだろって?上手いこと言って僕を騙そうったってそうはいかない。罰だ。君に罰を与えなくてはならないよ。

少しそこで頭を冷やして考えるといい。

罰を与えるのはすごく辛いことだ。でも、僕自身もこの辛さを乗り越えなくてはならない。少しそこで頭を冷やして考えるといい。洗濯物もパリつく冬の風は、君に重要なことを思い出させてくれるはずだ。それはつまり、僕がどれだけ君のことを思っているかということ。そのことを、どうか分かってほしい。

君をコーヒーグラインダーで粉砕してしまいたい欲望もある。

君をコーヒーグラインダーで粉砕してしまいたい欲望もある。密かな、可能性。こういう可能性を持っているだけで人々は僕のことを狂っていると言うかもしれない。けれど、これはあくまで可能性の話だ。本当に愛している人のことは、粉々にさえしたくなる。それくらい愛している。そのことがあまりに伝わらない頭の弱い人間も多い。ただ、僕が愛を伝えるべき対象はそういう奴らではない、あくまで君なんだ。だから君が、僕がどれだけ君を愛しているか分かっていれば、それでいい。

君と並ぶと林檎なんて本当に取るに足らない存在だよ。

僕は時々自分がとことん意地悪な人間になれる気がする。君と林檎を並べてしまうなんて!君と並ぶと林檎なんて本当に取るに足らない存在だよ。赤くて丸いということがどれだけおぞましいことなのか、林檎は君の隣で痛感するはずさ。自殺したくなるかもしれないね。でもそんなの知ったことではない。林檎の死が僕らの愛を深めるのであれば、それは林檎としても本望だと捉えるべきなのだからね。

今日は特別に魚焼きグリルで焼き直して上げよう。

さあ、ご褒美の時間だ。今日は特別に魚焼きグリルで焼き直して上げよう。外はこんがりと、中のチョコがとろりと溶けるように。君のチョコレートが溶けるとき、僕の心も溶ける。二人で溶け合って一つになりたい。分かるだろう?

チョコクリームが溶けて、君の本性が露わになる。

さあ、いよいよ君を裸にする時間だ。魚焼きグリルでこんがりと焼けた君の動悸を感じる。君をいつも以上に近くに感じる。君だって久しぶりに僕に会えて嬉しいんだろう。でも僕が君に久しぶりに会えてどれだけ嬉しいか、君は本当に分かっているのかな?

チョコクリームが溶けて、君の本性が露わになる。チョコクリームが溶けて、僕らの心も溶ける。溶けたクリームとこんがり焼き色がついたパンを同時に頬張る。カカオの香り、適度な甘さ、滑らかな質感。そんなクリームとは対照的にサックリと焼かれたパンは小麦の上品な香りと甘さのニュアンス。クリームを受け止める器量のよさこそパンの真骨頂、でもチョコクリームがなかったらその器量は発揮されないままで、それでは君という存在もなかった。でも君の核はチョコクリームではなくかと言ってパンでもなく、君はチョココロネでしかない。君は君だ。君はどこまでも君という名前で続く道であり、僕はそんな君をどこまでも果てしなく歩き続ける。さあ、コーヒーを淹れよう。

チョココロネはコーヒーにぴったり!

コーヒーという大人の玩具。コーヒーは僕と君のための玩具なのさ。違うよ、これは3Pではない。あくまでコーヒーは玩具、道具だよ道具。な、なぜ嫉妬している?なぜ理解してくれない?僕は君だけを愛している!

ウ●コみたいだって?よくもまあ自分のことをそう卑下できるね君は!僕がこれだけ君のことを愛しているのに、君が自分自身を卑下することは僕への冒涜になると気づかないのかい?クソが!なぜわからない!ええい、お前なんて噛まずに一飲みしてコーヒーで流し込んでくれるわ!チョココロネはコーヒーにぴったり!

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コメント

  1. だいなそ より:

    チョココロネ「買ったら早う食え」